八回目:「無断リンク禁止」考

ちょっとした疑問

いろいろな個人運営ウェブサイトを見ていて、「無断リンク禁止」という記述をしばしば目にすることがあります。このサイトも公開当初は同じ記述を載せていたわけですが、今考えると、なんでこんな表示を載せていたんだろう、と疑問に思います。と同時に、このフレーズを記述しているサイトの管理者さん達は、何のためにサイトを運営しているんだろうなぁ、とも思ったりします。

見てもらいたいのでは?

サイトを公開するということは、何か目的があるはずです。その目的は人それぞれだと思いますが、大抵の目的は「誰かに見てもらう」ということによって成立し得るものではないかと思います。言い換えれば、目的を達成するためには誰かに見てもらわなければならないわけです。そしてその「誰か」が初めてそのサイトを訪れる手段は、直接アドレスを打ち込むか、または他のサイトからのリンクをたどるしかないのです。

リンクは扱いが簡単

アドレスを直接打ち込むという手段は、訪問者があらかじめアドレスを知っていなければならないため、個人サイトなどのケースでは、どこか現実世界の公の場、たとえば学校内の掲示板などにアドレスを公開しておかない限り、主要な手段にはなりえません。しかもこの方法は、アドレスを一字一句訪問者が打ち込まなければならないため、失敗する可能性も高く、あまり有効な手段とはいえません。それに比べて、外部からのリンクを訪問者がたどるときに、その人に求められることといえば、「リンクをクリックする」という行為だけです。前もってサイトのアドレスを知っていることも、アドレスを一字一句正確に入力することも必要ありません。ユーザーに優しいという点では、リンクをたどるという行為のほうがアドレスを打ち込むことよりずっと優れているということです。

リンクする側の気持ち

リンクする側としては、リンクする先のサイトを「リンクする価値がある」と考えているわけです。自分のサイトを訪れてくれた人に、自信を持って紹介できるサイトでなければ、リンクなどということはしないはずです。

リンクする側、される側の利益

リンクする側としては、訪問者により良いものを提供できるという点で利益になります。また、訪問者に有益なリンクを提供することによって、訪問者のそのサイトに対する評価も高くなります。リンクされる側の利益としては、そのサイトに何らかの期待を持ってやってくる訪問者が増えるという点が挙げられます。誰かに見てもらう、ということが必要である以上、これは重要な利益です。

リンクする、されるということ

上で述べたように、リンクすること、リンクされることは非常に有益なことです。「誰かに見てもらう」ということがサイト運営の必要条件だと考える限り、不利益になるようなことは思いつきません。

考えられる反論

場合によっては「多くの人に見てもらいたくない」というサイトも存在するでしょう。あるいは、「管理者が主張している事には全面的に従うべきだ、そうでないと失礼に当たる」という意見もあるかもしれません。

ウェブというもの

しかし、上記二点の反論には、根本的な間違いが含まれています。そもそもの話、ウェブ上にサイトを公開するということは、不特定多数への公開を認めたということと同義であり、なおかつHTML文書をその主たる形式として用いるということは、そのファイルに対するいかなるアクセスも制御できないということを意味します。これらはウェブというものの本質的なルールだと思います。

「自分ルール」の限界

従って、「多くの人にみてもらいたくない」のであれば、ウェブ上にサイトを公開するべきではありませんし、「管理者のルールは絶対」という考え方は、ウェブそのものの本質を捻じ曲げる行為であるため、必ずしも正しいとはいえないと思います。

理由を明示しよう

以上より、ウェブの本質を損ねるような行為はしないに越したことはないのですが、それでもそのような制限を訪問者にかけたい場合は、その理由を明示すべきだと思います。その理由が納得するに足るものであったら、それを見た人はその指示に従うでしょう。

何人も他者を制御し得ない

ウェブ上では、誰かの動きを制御する、というのは本質的に不可能なのです。どう頑張ってもできない事をできなかったからといって怒ってみても仕方のないことです。当たり前のことなんですから。

外部からのリンクは福の神

しかも、外部からのリンクは、自分のサイトに興味のある人を連れてきてくれるという意味では、何にも勝る福の神なわけで、歓迎こそすれ拒む理由はないと思います。わざわざ「無断リンク禁止」を掲げてリンクしてくれそうな人を突っぱねるよりは、中身を充実させる努力をするべきです。そうした方が、そのサイトの目的は達成されやすくなるはずです。

千客万来

以上の理由から、「無断リンク禁止」という宣言は、書いておいても何ら得のないものだと思います。この宣言に基づくいろいろな問題が早急にウェブ上から払拭され、ウェブサイト間の訪問者の行き来がより活発になることを期待します。

参考文献

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